団地をさすらうおばあちゃんがみつめる終末の光景。奇妙に乾いた滑稽譚を描いて当代随一の鬼才による残酷メルヘン。芥川賞候補作「豚神祀り」「春のたより」を併載。
息子一家宅に居候中のおばあちゃんは、嫁に嫌味半分聞かされた、姥捨野とやらに想いを致しては、その奇妙な響きを反芻してみる。デンデラ野、デンデラ野、と…。老人問題、妻の蒸発、家庭内暴力といった、現代人の日常に忍び込む、ごく今日的な出来事に材をとりながら、生きてあることの不可解さ、哀しさ、滑稽さ、そして黒々と深い一瞬の闇を、鮮烈かつ軽妙な筆致で捉えた傑作3篇。 1995/11/01 発売