説話が伝える僧俗の往生、現代の日常ににじむ死。時間を、生と死を果しなく超境し小説の可能性を尽した大作。今昔の死と生を往還し文学の無限なる深みへ臨む。
寺の厠でとつぜん無常を悟りそのまま出奔した僧、初めての賭博で稼いだ金で遁世を果たした宮仕えの俗人ー平安の極楽往生譚を生きた古人の日常から、中山競馬場へ、人間の営みは時空の切れ目なくつながっていく。生と死、虚と実、古と現代。古典世界と現在の日常が、類い稀な文学言語の相を自在に往来し、日本文学の可動域を、限りなく押しひろげた文学史上の傑作。読売文学賞受賞。 2015/07/11 発売