ぬくもりの旋律
スポーツ記者の直生は、栄神タイガースの抑えのエース宮城峻太朗に絶大な信頼を置かれている。ある日、直生は宮城がメジャーへ挑戦することを知らされる。その挑戦を喜ぶと同時に、少しだけ羨ましく思う直生。いつか自分も独立して海外で取材がしたい…彼には二人の娘がいるのだが、次女の奏が自閉スペクトラム症で、子育てを妻の栞に任せっきりだった。そんな中、奏が怪我をして入院することに。緊張の糸が切れたように崩れ落ちる栞を前に、直生は何一つ声をかけることができない。深まる溝、先の見えない未来。後悔の中、彼は思う。そもそも自分は、なぜ、この仕事を選んだのか…すると、中学時代に出会った先輩・佐々倉美琴の姿が脳裏に浮かんできた。いま、小さな再生の物語が幕を開ける。