彩は匂へど
その日、深川の芭蕉庵は大騒ぎだった。芭蕉布(琉球の布)に包まれた物騒な投げ文が見つかり、芭蕉の掛け軸が蛇の這った跡で汚されていたのだ。文の内容は、恋しい相手を奪われた恨みの歌。そこに絵師の暁雲(後の英一蝶)が訪れ、庭に琉球の装束を纏った謎の女がいたと告げる。事件は女による脅迫か、ただの悪戯なのか。暁雲は芭蕉の一番弟子・其角と共に謎を追うがー。吉原で太鼓持ちを務める豪放磊落な暁雲と、生真面目だが不思議な話が大好物の其角。二人が出逢い、唯一無二の友になるまでを描く、『酔ひもせず其角と一蝶』の前日譚!