神変八咫烏
文久三年騒然たる幕末の風雲に包まれた江戸に出現した怪しの結社卍組、神田お玉ガ池の広大な屋敷に住む卍組の党首は汐見田一笑、副頭領はその息隼人であった。水戸浪士で世に名高き兵学者市瀬右有斎の美しい娘お妙は、岡っ引き蜘蛛の長六にひきたてられ、卍組のもとに拉致された。隼人や一味の赤痣の男法川左近次の魔手がお妙のうえに迫ったとき、金泥をもって「八咫烏」と書かれた黒羽根の矢が飛来した。八咫烏の正体とは。そして、兵学者右有斎の秘書「築地図録」のうち欠損の一枚を入手せんと狂奔する卍組の一党のまえに立ちふさがる正義の若侍は、京より江戸へ下ってきた長門小次郎であった。舞台は日光へ!スケールも大きく展開する伝奇長編時代小説の雄編。