東海の暴れん坊
安政二年の秋、甲州身延山の盆割りのことから、津向の文吉と武井の安五郎との間に喧嘩が起ころうとしたとき、双方無事に丸く収めたのはいま売り出しの親分清水の次郎長であった。しかし、このために次郎長は凶状旅となり、大政・小政らの子分とも別れ、独り旅に発っていった。不運に見舞われた次郎長であった。兄弟分の見付の友蔵一家に草鞋をぬいだ次郎長は、そこで女房お蝶と子分の森の石松とに出会って驚いた。旅先で苦労する親分次郎長の苦境を救うべく、石松はかつて次郎長に恩を受けた保下田の久六を訪ねた。ところが、久六は次郎長召捕りに向かった。遠州森町生まれの片目の快男子森の石松の最期まで、ベテラン木屋進の筆で痛快な物語が展開する。