南方の秘宝
中京の盛都名古屋で代々呉服商を営んできた松丘家だったが、番頭の横領と当主の失踪によって破産状態に陥ってしまった。そして、それから七年ー二十三歳になった長男鍵一だったが、最後の頼みの綱であった“七宝の花瓶”を盗まれ、絶望のあまり恋人中込寿美子と古美の海岸で心中を企てた。その花瓶には松丘家に永年伝わる宝物を隠した場所を示す暗号模様が描かれていたからだった。ところが、運よく助けられた二人は、海辺に捨てられていた花瓶を漁師が拾っていたことを知って驚くとともに、その僥倖に力を得て宝探しの謎解きに再度挑むことになったが…。-表題作の他に「意外な告白」、第一回作品「残されたる一人」(脚本)を併収した。