膝に目薬
千谷エーガ精機社長の千谷大伍は、高校生の愛娘奈美子を誘拐され、1億円を要求された。大伍は、娘が普段から慎重なこと、脅迫電話での機転を利かした応答から、犯人が自分の異母弟東吾と看破した。東吾は素行の悪さと浪費癖で、千谷家を追放されていた。大伍は、この骨肉の醜聞を避けるべく、極秘裡に事態収拾へと動いた。だが、家族の苦悩をよそに、同家の嫌われ者である長女志津江のみが冷酷な反応を見せていた。やがて救出された奈美子は、暴行を受けてはいたが婚約者も決まり、千谷家は平和を取り戻したかに見えたのだが…。推理文壇の重鎮が、著作3百冊突破を記念して読者に贈る渾身の推理傑作。