ママナラナイ
「ママナラナイわね、お互いに」斉藤尚弥は不動産会社に勤務する三十六歳。近頃、何もかもうまくいかない。男性器も心も折れてしまい、おまけに仕事も絶不調ー通称“川の家”と呼ばれる高台にある家に住む、夫婦への立ち退き交渉が難航していたのだ。夫人によれば、立ち退きを強く拒否しているのは夫の方らしいのだが…。夫人の協力を得て交渉を続けるうちに、やがて思いもよらない事実が判明しー(表題作)。この世に生を享け、大人になり、やがて老いるまでーままならぬ心と体を描いた美しくも不穏な、極上の10の物語。