木野塚探偵事務所だ
リュウ・アーチャーやフィリップ・マーロウやマイク・ハマーや、とにかく、その種の探偵小説を読んでいると、そこに自分の願望と人生の理想がうっとりするほど投影されているのだった。長い間夢に見てきた日々が、木野塚佐平氏の六十年の人生において、ついに現実のものとなりつつある。…新宿に『木野塚探偵事務所』を開き、電話を引き、秘書の募集広告をした。そして、応募してきた秘書は、華奢な首と、丸いとぼけたような大きい目を持ち、女子高生のアルバイトとみまがう痩せた女の子だった。木野塚氏はこの梅谷桃世と難問にとりくむことになる。
関連小説
木野塚探偵事務所だ木野塚探偵事務所だ
経理課一筋37年で警視庁を定年退職した木野塚佐平、60歳。フィリップ・マーロウやリュウ・アーチャーなど海外のハードボイルド探偵を崇拝する氏は、自身がコツコツと貯めたヘソクリで探偵事務所を開設する。場所は新宿の裏町、吸えないタバコをポケットに、ニヒルに事件を待つ。しかし、依頼どころかあこがれの美人秘書もやってこない。そんなある日、近所づき合いで掲載した業界紙の広告から、記念すべき最初の依頼が。その事件は、なんと金魚の誘拐事件だった。愛すべき老人探偵の活躍を描く、ユーモア・ハードボイルド連作集。堂々登場、だ! 著者あとがき=樋口有介/解説=中辻理夫 2008/03/12 発売