征翼の守護神(しゅごしん)
土佐沖に広がる夏の青空の下、大和は盛大に飛沫を巻き上げながら航行していた。その飛行甲板の上には、それぞれ10機ずつの零戦、九九艦爆、九七艦攻が、整備員たちの手によって次々と運び込まれ、発艦準備を行っていた。「なんともいえない光景だな」大和艦長として防空指揮所に立つ黛が、甲板上の作業を眺めながら呟いた。傍らに立っていた航海長が、片方の眉を上げながら言った。「まったく、馬鹿げていますよ。これだけ巨大な空母-いや、軍艦は、世界広しといえども、我が海軍にしか存在しないのですから」黛はぎこちなく頷いた。この大和が戦艦として生まれなかったことに対し、複雑な心境を抱いていることに変わりはなかった。