井筒にかけし
昭和の戦争が終わって5年。旧家「大洲屋」の当主が宿場町の女性に産ませた子という烙印のもと、新興の造り酒屋「相垣」に嫁いだ柚子。そこでも待っていたのは火宅の日々だった。時代の荒波に飲まれ零落する「大洲屋」、やはり時代の波に背を押されながら会社組織へと姿を変えていく「相垣」。幼い頃「井筒のようじゃ」と言われて育った「きょういち」への想い。その人を裏切って他家に嫁いだ自分の罪。2つの家に絡みつく秘められた血の繋がりと、忘れられない人への想いが、津波のように繰り返し柚子を追い詰めていく。母から子、そして娘へと続く火宅の日々。それでも前を向いて生きる柚子の姿を描く半生記。
一 早春 二 埋み火 三 “はこべ”四 理 五 花・顔 六 女 七 繕い 八 鮠 九 影 十 乱れ雲 十一 声 十ニ 相似 十三 靴 十四 命の宿り 十五 贈り物 十六 誕生・終焉 十七 形見 十八 隣国動乱 十九 たんぽぽ ニ十 無言劇 ニ十一 彼岸 二十二 稽古 ニ十三 後継ぎ ニ十四 会社設立 ニ十五 酒場 二十六 霧の中 二十七 絵本 二十八 いや、いや
二十九 方針 三十 待つこと