分断の構図
古谷太は東京の一流機械企業国盛に採用され、一端の男に為る、大志を抱き上京した。が、彼の配属先は葦の生い茂る河川敷の子会社、セメント版工場で有った。過酷な環境下十年の歳月を経て、国盛東京本社勤務を果たした彼は、大型機械百年の栄光に現を抜かし、新時代の求める小型機械の開発を、疎かにした老企業の断末魔を見る事に為る。機械の国盛の生き残りに命を懸ける専務霜島に、最後の大戦いに挑む古武士の潔さをみた彼は。兄竜介の突然の死を泣き叫ぶ母の願いを振り切って霜島の娘と結婚。霜島を支え不眠不休の古谷の身体に異変が起きる。そんな折、彼は部下に誘われた餃子屋で、古い絵日記帳の絵を見てひどく驚く。霜島の国盛再生策は頓挫し、貸し剥がしを目論む銀行は情け容赦のない国盛の資産売却を実行。分割売却される国盛の資産に多くの企業が群がる。そして、古谷は人生の師と仰ぐ霜島の裏の顔を見る事に為る。