雨と短銃
慶応元年、坂本龍馬の仲介により薩摩藩と長州藩は協約を結ばんとしていた。長きに亘った徳川の世から新たな日本の夜明けを迎えるのだ。しかし、一件の凶事が協約の締結を阻む。上洛していた薩摩藩士が稲荷神社の境内で長州藩士を斬り付けたというのだ。更に下手人は目撃者の眼前で、逃げ場のない鳥居道から忽然と姿を眩ませた。このままでは協約協議の決裂は必定、倒幕の志も水泡と帰す。憂慮した龍馬の依頼を受けて、若き尾張藩士・鹿野師光は捜査に乗り出す。歴史の大きな転換点の裏で起きた、不可能犯罪の真実とは。破格の評価を受けた『刀と傘 明治京洛推理帖』の前日譚にして、著者初となる時代本格推理長編。