風になるにはまだ
情報でできた世界には「風」が吹くんです。
身体を離れて仮想世界で生きることが可能になった未来を描く
第13回創元SF短編賞受賞作にはじまる連作短編集
生きる事、生きていくという事を、
静かに問われる、繊細で美しい物語
--宗岡敦子さん(紀伊國屋書店福岡本店)
触れることができないという一抹の寂しさを感じつつ、
それでも瑞々しいこの仮想世界は美しい。
--齊藤一弥さん(紀伊國屋書店仙台店)
散りたくない。
無形の情報に還(かえ)るにはまだ、わたしというものへの未練が濃い。
病気や障害などの事情で生身の体で生きることが難しくなった人々が、〈情報人格〉として仮想世界で暮らせるようになった近未来。情報人格の小春は、大学時代の同級生が集うパーティに出席するために「一日だけ体を貸し出してくれる」サービスを利用する。体を貸してくれたのは年の離れた大学生だった。ひとつの体を共有して、ふたりは特別な一日を過ごす。
第13回創元SF短編賞受賞作を含む瑞々しいデビュー作品集。
■目次
「風になるにはまだ」
「手のなかに花なんて」
「限りある夜だとしても」
「その自由な瞳で」
「本当は空に住むことさえ」
「君の名残の訪れを」