夫の無実を信じる妻、弟の死に陰謀の気配を感じ取った兄…。敵を追って二人が向かった先は、天保の改革で開拓が進む印旛沼。そこには「化土」が渦巻いていたー。男と女の秘めた想いが交錯する。構想20年、著者が遺した渾身の長編小説。
化土ーそれは積み上げた先から崩れ落ちる土のこと。崖下にたまる化土は、淀んだ政治とそこにどっぷり浸かった役人たちの象徴だ。そんな化土にからめとられ、殺された男がいた。老中・水野忠邦配下で天保の改革推進派の幕臣・栗橋伊織である。故あって廃嫡されていた伊織の兄は、かつての想い女だった弟の妻・花重とともに、敵を追いかけ、印旛沼に向かうが…。時代小説の名手が紡ぎ出す感動の人間ドラマ。 2017/11/08 発売