小説むすび | はぐれ古九谷の殺人

はぐれ古九谷の殺人

はぐれ古九谷の殺人

出版社

双葉社

発売日

1988年7月1日 発売

「どうしたんですか!」平介もギョッとなって息を呑んだ。倒れている男はピクリとも動かない。どうやら死んでいるのではないかと思われた。「吉野はん、吉野はん」芳太郎は必死になって男を揺すっている。が、やはり反応はなかった。(これは殺人事件だゾ)平介は背筋にゾクッとするものを感じた。土間には黒ずんだ血が生々しく流れている。えらいものに巻き込まれた、という気持ちもあるが、同時にムラムラと好奇心も湧いてきた。自分がこれほどヤジ馬根性の旺盛な人間だとは、26歳の今まで気がつかなかった。平介はにわかに探偵気どりになって素早い一瞥を店内に投げかけた。-美術店の一人息子が客の美貌に眼がくらみ、高価な壷を騙し取られて…。行く先々で起こる奇妙な事件、アンティーク探偵『推古堂』平介がくり広げる長編ミステリー。

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