魍魎伝説(第5巻)
この物語は、墓地に逃げこんだ男の悲鳴で幕があがる。そして展開するのは魑魅魍魎の世界-たとえば、「貴様は…一体…何者だ。亀頭は震え声で叫んだ。声を出すことによって、萎縮してしまった魂をふるいたたせようとしたのだ。おれか、赤い濁った双眸から鬼火のような燐光がほとばしった。おれは地の底の闇より幾多の呪われた自我を担って地表の物質界に蘇生した魂だ。おまえのような痴愚な凡夫とは人間の種類がちがう。特殊な頭脳の持主なら、おれの背髄中に息づいている超太古の叡知を視ることが出来るだろう」というように!欲がうず巻く・性が疼く・力が暴れる-人間の胸の奥の呵嘖をゆさぶって文が跳ねる。-著者会心の長編伝奇ロマン第5巻乾の項。