寝台特急〈はやぶさ〉の殺人
中を覗いた少年は、ぎょっとした。目の前の寝台のシーツが赤く染まっていたからだ。爪先立ちした少年が、寝台の上で見つけたのは、血まみれになった男だった。だが、少年は、すぐにその男がどういう状態でいるか理解できなかった。「坊や、どうしたの?」この時、少年は車掌に声をかけられた。「あッ、車掌さん、人が死んでいるみたいです」「本当かい、坊や」半信半疑でドアを開いた車掌は腰を抜かしそうになった。だが、自分を励まし、さらに半歩、前進した彼は、思わず悲鳴をあげていた。乗客の頭がつぶされていたがらだ。目をそらした車掌は、あとずさりすると、少年がまだそこにいたのも忘れて、あわてて同乗している鉄道警察隊員に知らせに行った。-寝台特急〈はやぶさ〉の個室寝台で発見された頭部損壊、両脚切断の無惨な遺体!ますます好評の長編書き下ろしミステリー。