ナイスちょっとで殺人を
キャディ泣かせの手間のかかるホールだった。「ぼくが合図してから打ってください」と4人に言って、ぼくは走った。旗が見え、グリーン全体が見通せる地点まで駆け登ったとき、ぼくは訝った。思わず目を見張った。旗のそばに大の字型で人が倒れている。手足を広げた人間だった。うつ伏せで、泳ぐような格好になっていた。その直前、次の17番ホールへ向かう通路の茂みのかげで、ぼくは動くものを目撃した。ゴルフを利用した殺人事件!ぼくは胸をたかならせた。ゴルフにこっているサラリーマン殿、この小説には〈哀しき身分〉が描かれている。あなたへの直木賞作家が贈る〈警告書〉だ。