悪党伝説〈外法狩り〉
後醍醐天皇による建武の新政がはじまった頃の伊賀国南部の黒田荘。忍びの技を身につけた“黒田の悪党”のひとりで、腕ききの忍者・野吹銃蔵は信州伊那谷から仕事を終えて半年ぶりに郷里の土を踏んだ。だが、わが家から最愛の妻・小麦と息子・平太の姿が消えていた。都の公家・西園寺家の使いだとかたる男たちが二人を連れ去ったと知られる。行方を追って京へ上って野吹は後醍醐帝の近臣・千種忠顕邸に忍び入り、千種が妻子をさらった張本人と知る。権力の手先の悪竦な妨害にめげず、野吹は妻の求出に成功はしたが…。-南北朝の糜爛した裏面史を気鋭が壮大なスケールで描く。