本書は、藤原定家筆、御物本『更級日記』影印複製本を底本とした。
一地方官の娘として育った作者が、父につれられ京へ上る時の紀行から始まり、『源氏物語』を手にして「后の位も何にかはせむ」と、几帳の蔭で読み耽った夢みがちの少女時代、そして恋愛、結婚、夫との死別、50代のわびしい一人住いを綴って日記は終っている。全盛期の平安時代が次第に翳りをおびてくる、そうした社会に生きた一人の女性の記録。 1963/11/16 発売