名刀伝(2)
日本刀ほど、実用性と美を兼ね備えたものは世界にも稀である。霊性さえ備えた名刀に興味を惹かれる入り口は多々あるが、その初手として優れた書き手の短篇小説はいかがだろうか。傑出した刀剣は、実用性と美のみならず、読み手の心を掴む物語も帯びているのだー。苛烈な父によって鎧作りに邁進していた虎次郎が、刀工として名を成すに至るまでを描いた柴田錬三郎「虎徹」。海音寺潮五郎が呪われた剣の真実を探った「村正」を始めとして、東郷隆「試し胴」、赤江瀑「艶刀記」、澤田ふじ子「贋の正宗」、山田風太郎「ガリヴァー忍法島」の六篇を収録。