小説むすび | 君の手が語ること

君の手が語ること

君の手が語ること

国文学教授で還暦を迎えるベルギー人の「僕」と岐阜に住む看護師の梓は、手話の世界を通じて出会い、互いに惹かれあう。梓の住む岐阜での逢瀬で梓の抱える闇を感じながら、二人の愛はデフリンピック会場で意外な展開を迎える。(小川洋子氏・推薦)

──無言と無音は違う。沈黙の中でも言葉は行き交う。そういう言葉は、まるで今、心から取り出したばかりとでもいうような、ほのかな温もりを帯びている。僕と梓の間に描かれた指の軌跡が、まぶたの裏に映ったままいつまでも消えないのは、その温もりのせいだろう。
                小川洋子

このエントリーをはてなブックマークに追加
TOP