澱河の府
天明七年八月の大坂に起った事件が事の発端である。ある明け方、本町橋東詰にある西町奉行所の門前で、有馬家の侍が何者かの手で惨殺された。この侍は曾根崎の色里で湯屋の抱え女郎らを殺したため、有馬家蔵屋敷より奉行所に引き渡されようとしていた。大坂町奉行として大坂城京橋口の東町奉行所に着任した土屋志摩守(冬馬)は、西町奉行所の犯人捕縛に力添えして東町より人数をくりだした。この捕り物の直後、土屋冬馬が道修町の大店を尋ねたところ、この大店の一人娘には四天王寺の御殿に妾奉公にいくという難儀が強制されていた。大坂の闇はどれほど深いのか…。武士の“矜恃と正義と愛”に生きる!土屋冬馬、八重の波乱の行状記。