高層ビルの屋上で、新宿歌舞伎町の穴蔵で、現代を呼吸する男と女が都会の片隅に睦み合う-。電気工の青年とフーゾク嬢との出会いと別れを両者の語りによって鮮やかに描き出す恋愛小説。
電気工の青年が修理に訪れたのは昼休みの風俗店だった。手作りのサンドイッチを俯いて食べていたヘルス嬢に青年は一目見て恋をした。以来、青年は客として彼女を指名するようになるのだが…。アスベストの被害に遭い長くは生きられない電気工と路地裏の風俗店で息を潜めて生きる女。大都会の裏側で蠢く不器用な男女の切なく哀しい恋を紡ぎ出す傑作「一輪」など、中編二編を収録。 1996/03/01 発売