平将門(上巻)新装復刊
筑波の山から程近い豊田の里-平小次郎将門の生地である。筑波明神の祭礼の夜契った女(小督)に対する愛情が将門の胸を離れない。将門の父平良将急死の後、一門の同族は所領の横領を企てている。小督の父源護に申し込んだ縁談も、しかるべき官位なきゆえと断られ、伯父等の甘言に乗せられた将門は、官途につくべく従兄貞盛と共に京に向かう。京で、将門が辿る運命は苛酷、無慈悲なものであった。貴子姫との恋も貞盛に奪われ、官位への道も開けない。寂寞と望郷の思いが将門の胸にみちる。空しく坂東へ帰った将門を待つものは伯父達の陥穽である。伯父良兼の妻詮子に図られて、源家へ赴く途上、将門は敵の大軍に挾撃される。将門は、奪然、寡兵をもって敵陣に殺到する。戦機とみに熟し、豪快壮烈な血戦は関東の野に拡がってゆく。