美術商ローラと家路を急ぐ青年
"絵の中の鳥でさえ籠から出られるのに、僕はここからどこへも行けないーー
絵が実体化する不思議な森に囚われた、絵描きの青年ジル。
故郷への帰還を諦めていた彼の前に、ある日美術商を名乗る謎の少女ローラが現れる。
「あなたをこの森から解放してあげると言ったら?」
森を抜け出すための条件は、彼女のために見たこともない“龍”を描き上げることだった。
心を閉ざしたジルが、ローラとの交流を重ねる中で本当の「帰る場所」を見つけるまでの、美しくも切ない再生の物語。
【表題作を含む全4篇を収録】
山火事ですべてを失ったドリアードの洋裁店員、旧友の魔女を追う吸血鬼の学者、退屈な天上で下界を夢見る孤独な龍。
彼らの運命もまた、神出鬼没の美術商ローラによって交錯していく。
そしてすべての物語が繋がるとき、ローラという存在の謎と、この世界の美しさに辿り着く。"