貴腐薔薇
老いに抗いながら
過去の恋、突き上げてくる激情と性への執着
破滅への衝動と闘い続ける
その終着点は美の極致か幻か……
青年時代に小説を書いていたが、途中で才能への疑問を覚え挫折し休筆した。
心の奥底に燻り続けていた文学への想いが再燃したのは、七十歳のとば口が見えた瞬間だった。個人の生や愛や死の想念が未知の深淵に墜落していく時、いかに激しく輝くかに気づいた僕は再び筆を執らずにはいられなかった。人間の苦しみや喜びや悲しみ、怒りが僕の脳裏に渦巻いた。僕は彼等を愛しエゴイストと呼んだ。心優しきエゴイストたち、と。