安藤昇と花形敬 安藤組外伝
安藤組外伝 THE SHIBUYA WAR
圧倒的ノンフィクションノベル 書き下ろし作品
戦後の渋谷の街を命を賭し、剛力を持って疾走した二人の男の「血を暴力」
ふたりはヤクザになろうと思って生まれてきたわけではない。
ヤクザになりたいと思ったわけでもない。
祖国のために、一命を捧げる覚悟の若者が時代に翻弄され、人生に懐疑し、変節に激しく抵抗し、気がついたらヤクザになっていた。
安藤は花形の凶暴性のなかに葛藤と純粋性を見抜き、花形は安藤に殉じることで男気を貫いた。
解散後の安藤さんについては、よくしられているとおりだ。ひょんなことから映画俳優に転じ、五十本以上の映画に主演して一時代を画す。俳優を引退して以後は映画プロデューサーとして、あるいは文筆家として多くの作品をのこし、二〇一五年十二月十六日、八十九歳で波乱の人生を閉じた。
私は自身の執筆活動のほか、安藤さんと立ち上げた安藤昇事務所(九門社)の“秘書役”として二十数年をいっしょに過ごし、安藤さんの著作や映画制作、ビジネスコーディネートなどに携わってきた。そんなことから花形敬については、安藤さんの口から、あるいは事務所に遊びにみえる元安藤組組員の方々から断片的に耳にしていた。(略)
すでに鬼籍に入った古参組員が、こんなことを言った。
「安藤は花形がいなくても安藤だが、花形は安藤がいてこその花形だ」
花形が安藤組でなく別の組にいたなら、ただの粗暴なヤクザではなかったか。戦後史に語り継がれる安藤組の大幹部であり、安藤の留守に劣勢となった組を背負い、殺傷され、そして「伝説」として昇華した。
前々から、ふたりの半生を同時進行形にして「安藤と花形」を書いてみたかったが、このたび安藤さんの七回忌を期に、鎮魂の意味をこめ、小説の形でペンをとった。
後書きより
第一章 花の雨
対極の人生
少年院
名門中学
「昇へ」母の手紙
花形敬、青春の発露
予科練
日本がヤバイ
特攻命令
第二章 遠雷
弱肉強食
無法の時代
渋谷のステゴロ
男を売る
ヤクザ戦国時代
安藤グループの跳躍
自分の眼力を信じる
「殺せ! 耳も鼻も落とせ! 」
渋谷の厄ネタ
第三章 風花
朝鮮特需
覚悟を磨く
「俺は、あの人に呑まれている」
潮目の時
これがヤクザの力だ
人斬りジムとの死闘
第四章 時雨
人生の不条理
拉致
男は命乞いしてまで生きてはいけない
怯える力道山
下剋上
蟻が巨象に挑む
花形が心を許す男
三船敏郎と酒
花形敬、撃たれる
第五章 疾雷
孤高と孤独
「安藤を怒らせたらヤバイよ横井さん」
弾く!
安藤ブランドの沽券
渋谷から安藤が消えた
第六章 花の雲
喰うか、喰われるか
前橋刑務所
迷走
安藤組VS東声会
花形敬、時代の終わり
「敬は信念に殉じたのでは」
“赤い汗”を弔う
時は止まらず
後書き