小説集 蔦屋重三郎の時代
鶴屋南北、喜多川歌麿、葛飾北斎、曲亭馬琴、山東京伝、十返舎一九……。名手四人の小説と関連作品の図版で、2025年NHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」の時代をより深く知る!
版元蔦屋重三郎がある日銀座の京伝の住居(すまい)をさも忙(せわ)しそうに訪れた。
「おおこれは耕書堂(こうしょどう)さん」
「お互いひどい目に逢いましたなア」
蔦屋は哄然(こうぜん)と笑ったものである。(…)
「身上半減でこの蔦屋もこれ迄(まで)のようにはゆきませんが、しかしこのまま廃(すた)れてしまっては商売冥利(みょうり)死んでも死なれません。そこでご相談に上りましたが、今年もいよいよ歳暮(くれ)に逼(せま)り新年(はる)の仕度(したく)を致さねばならず、ついては洵(まこと)に申し兼(か)ねますが、お上のお達しに逆らわない範囲で草双紙をお書き下さるまいか」
余儀ない様子に頼んだものである。--国枝史郎「戯作者」より
吉川英治「大岡越前」(抄録)
邦枝完二『江戸名人伝』より「鶴屋南北」「喜多川歌麿」「葛飾北斎」「曲亭馬琴」
国枝史郎「戯作者」「北斎と幽霊」
永井荷風「散柳窓夕栄(ちるやなぎまどのゆうばえ)」(抄録)