破戒僧日光円蔵
幼くして日光山に入門し、僧侶としての修行を積むも、性の目覚めとともに不邪淫戒を破って破門。山岳修験者として各地を巡るうち忠次と出会う。やがて江戸に出た円蔵は、斎藤弥九郎の練兵館で剣術と四書五経を学び、黒船来航に揺れる時代の風にふれる。一方、忠次は大前田栄五郎の下でヤクザ修行をし、故郷の上州で忠次一家を名乗っていた。幕吏に追われる忠次が籠もる赤城山に立ち寄った円蔵は忠次一家の軍師として迎えられる…。迫り来る新時代の波に押されて幕府は忠次を捕縛、処刑する。円蔵は、その後長崎に出向き、シーボルトに医学を学び、栃木県初の歯科医として明治九年まで貧しい人たちの治療に当たった。『侠客有名鏡』に西の前頭八枚目にランクされた円蔵の知られざる生涯。