夢、遙か
「部長職を解き調査役を命ずる」という四月一日付の辞令を受けた主人公は、その日から机の配置も変わり部下のいない社員、いわゆる窓際族になった。しかし社内の権力闘争から再び表舞台へ上がるが……。権力闘争に巻き込まれるも同僚への思い遣りの心を大切にし、「義を見て為ざるは勇無きなり」と義を貫く主人公の生き方は、聖書の言葉「日は昇り、日は沈みあえぎ戻り、また昇る」のごとく転変を繰り返す。本作品は、組織の掟と、義や情の間に揺れ動き翻弄されながらも、「人間としてやるべきことは何か」を貫いた一人の男の再生の物語だが、定年後の人生をどう生きるか──という、誰もが抱える後半生の大きなテーマに光を当てた物語でもある。
第一章 止まって見えた大時計の針
第二章 抜け切れない会社人間
第三章 君は何を報告したのだ
第四章 あなたは運のいい人だ
第五章 言われたとおりにやれ
第六章 社長が行方不明です
第七章 今度は君が社長だ
第八章 賽は投げられた
第九章 最初に見せたのは誰だ
第十章 常務が自殺
終 章 夢、遙か
あとがき