星と祭
会社社長の架山は琵琶湖の遭難事故で、大切な娘を失う。娘の遺体は七年経っても上がってこない。死を受け入れられない架山は、それを「生と死」の間に存在する“もがり”の期間と捉え、心の中で娘との対話を始める。ある日、娘とともに死んだ青年の父親・大三浦に誘われ、琵琶湖近くの古寺で十一面観音に出会う。「観音が人間の悩みや苦しみを救うことを己に課している修行中の仏様である」と聞いた架山は、十一面観音の虜となり、湖畔の十一面観音を巡り始める。そんな中、ヒマラヤでの観月旅行に誘われ、娘と二人だけの対話を持つために、ヒマラヤ行きを決心する。月光を受け、神々しく輝く雪山に「永劫」を感じた架山はー。娘の死を「運命」と受け止め、悲しみを乗り越えようとする架山と、死者の霊を祀り「鎮魂」するためにひたすら手を合わせる大三浦。二人の父親を通して、「愛する者の弔い方」を丹念に描き切った感動の長編小説。