出版社 : 徳間書店
(この寺はなにか怪しい)--絵師・曾我蕭白は胸騒ぎがした。江戸中期・宝暦八年、画業で伊勢に来た蕭白は、熱狂的な信者を集める寺を知る。植物状の異様な宝冠をかぶる本尊、同様の衣をまとう僧侶の周りで起こった怪死。蕭白は京に住まう妖草師・庭田重奈雄に至急の文を送った(表題作)。異界の魔草と闘う重奈雄の前に続々と現れる凶敵草木、さらには、彼の許婚・椿の心を掻き乱す美貌の武家娘が重奈雄のそばに……。大人気伝奇、書下し作品集。
名古屋の建設会社社長・時津逸人は、すい臓ガンの疑いを告げられたとき、これまでの人生を振り返り、若き日の苦い恋の記憶が蘇った。出世のために捨ててしまったかつての恋人に会って償いたい…。女との意外な再会。彼女は時津の記憶をすべて失って、一人で生きていたのだ。二十年の時を経て始まった二人の二重生活。そして、男の人生が裁かれていく…。傑作長篇サスペンス。
鏡池若葉の夢はお笑い芸人になること!高校入学初日の運命の相方・大月弥生に出会い、心が震え早速声をかけるが、相方が入部したのは、なんとウエイトリフティング部。弥生の気を引こうと渋々入部する若葉だったが、一キロ一キロ、重さをかさねて、深まる弥生と仲間との友情に若葉の心が奪われていく。ウエイトリフティングに高校生活をかけた少女たちの爽快青春小説。
世田谷で起きた独居老人の殺人事件を捜査していた夏目凜子のもとに、一通の書面が匿名で届いた。凜子は何気なく封を切る。そこには小学生である息子の写真と共に「息子を誘拐した。世田谷の事件から手を引け」との手紙が同封されていた。何故息子とかかわりがーー。凜子の中で母親と刑事の心が葛藤する。
魚釣島で日本人が中国人民解放軍に拘束されたことを機に海自と中国軍が交戦状態に入った。在日米軍もこれに呼応。沖縄を舞台に“戦争”が勃発した。米軍によって組織された民間の自警軍ーー琉球義勇軍に参加した沖縄生まれの渋谷賢雄は激戦を生き抜く。そして突然の終戦。東京に移った賢雄の周辺で暗躍する中国の非合法工作員〈紙の虎〉の真の目的はーー? やがて賢雄のもとにかつての部下たちが集う。国際謀略アクション小説、新たな傑作の誕生。
父祖伝来、五百年の歴史を護ってきた佐竹義重。 今は子・佐竹義宣に実権を譲り隠居した身だ。 そんななか、天下統一を成した豊臣秀吉より命が下る。 「常陸を平定せよ」 佐竹家の誰もがなし得なかった夢を我がなし得る。 年老いた身でありながら早速攻略に取りかかる義重だったが……。 父祖伝来の重み、老いへの恐怖、次世代へと委ねるもの。 歴史小説の麒麟児が佐竹義重を活写する!
群馬県大塩湖で沖縄在住の元米兵の死体が発見された。謎の言葉「黒人のオルフェが微笑んでくれる」を残して。財津刑事は遺留品と一緒に見つかったボタンに注目する。それは那覇の精密機器会社が作業着用に特注したものだった。元米兵は群馬県のスーパーに貼られた、地元出身の人気歌手クラウジア明美の写真をカメラに収めていた。沖縄出身の母をもつ彼女に脅迫状が届き怪しげな芸能ジャーナリストがつきまとう。そして第二の殺人が…書下し長篇推理。
各企業が車を飾りたてて大阪・御堂筋をパレードーその最中に事件は起った。繊維メーカー・コスモレーヨンが開発した新素材をまとったミス・コスモの梅本観華子が、大観衆注視の中、急死したのだ。胃から青酸化合物が発見され、コスモレーヨンを取材中の浅見光彦が事件にかかわることに。コスモの宣伝部長・奥田とともに観華子の交友関係を調べ出した矢先、第二の殺人が。長篇推理。
剣と将棋がめっぽう強い旗本の三男坊・飛川角之進。町娘と一緒になり、「あまから屋」という料理屋を営んでいる。実は彼は将軍の御落胤。そのことを知る美濃前洞藩の重臣たちに頼まれ、病に倒れた藩主の養子となり、家督を継ぐことになった。名を斉俊と改め、領地へ赴き、親藩との諍いを治めつつ、改革を進めるべく尽力する。若さまは、江戸に残した息子と妻と暮らすことができるのか?
上信電鉄千平駅。下仁田行き始発電車の運転士がホームで俯せに倒れている老人を発見した。背中を数カ所刺されており、「ジャッジメント!」と言い残して間もなく死亡した。群馬県警の捜査により、老人は、千平駅の構内を毎日ボランティアで清掃していた小原勝利と判明した。しかし、捜査は暗礁に乗り上げ、警視庁の十津川警部に捜査協力の要請が…。巻末に全著作リストを付す。
婚姻届を出すのは待ってほしいーー彼はどうして結婚を決断してくれないんだろう。そこには思いもよらない理由があった(「二年半待て」)。死を目前に、なぜか旧姓に戻していた祖母。評判のおしどり夫婦で、祖父の眠る墓に入ると公言していたのに……。“エンディングノート”からあぶりだされる驚きの真実とは(「お片づけ」)。就活、婚活、妊活、終活ーー人生の岐路にまつわるミステリー7篇。
美貌の女探偵・唐渡美知子は原宿の自宅マンションで消音器付きの拳銃に狙われた。命拾いした美知子は、過去に関わりのあった、影乃という謎めいた過去を持つ探偵と、事件の真相を追い始める。ほどなく、彼女の事務所を訪れていた女子大生・光成真澄と父親の会社社長が立て続けに殺される…。30年の時を経て執筆された続篇『罠に落ちろ』のシリーズ第1作、藤田ハードボイルドの原点!
江戸を騒がし、町方はおろか火盗改め方も捕まえられない怪盗流れ星は、非道をせず、貧しい人々に施す義賊だ。 そんな彼が若い娘に恋をした。しかし、その娘は北国の小藩の悪事に関わりがあった。それを知った火附盗賊改め方の同心・鏑木十左は……。 犯科への取り組みを認められ、町奉行所から火附盗賊改め方へ、異例の抜擢をされた同心・鏑木十左は、老中・松平定信の命をうけた隠密・紫乃らとともに、悪人たちを追い詰めていく。
「祝言は挙げられない」簪職人のおりよは、突然許婚の新之助にそう告げられた。理由はなんとなく思い当たる。新之助は形がよく、おりよは目が見えないから。二人で歩いていると耳の後ろが熱くなる。女たちの視線が痛い。どうして私だけこんなことにーー。悔しさを押し殺し、手に残る感覚を頼りに仕事に没頭するおりよだったが……(「闇に咲く」)。遊女、船問屋、紙問屋、簪職人、花火師、旅籠屋……市井の人情を掬い取る、珠玉の時代小説。
母親が愛人の首を切り落とした現場を目撃してしまった今村まどか。十四歳の少女の心のケアのため、ホームズたちがいる“第九号棟”へ入院することになった。ところが入院したその日、看護人が同じように首を切り落とされ殺害されてしまう。自分を“サロメ”だと思い込んだまどかの犯行なのか?病院から失踪したまどかを追って、ルパンやダルタニアンたちは調査を進める!
深川の町外れ“鬼灯長屋”に、奇妙な看板がかかった。“雅やーよろず、みやびごと伝授”。立花、茶の湯、書道、蹴鞠、和歌、源氏物語などを教えるというのだが、およそ裏長屋にはふさわしからぬ習い事。この私塾を開いた浪人者・京ノ介は、女帝陛下の密命を帯びていた。京ノ介に襲いかかる朝廷転覆の策謀の裏には、意外な黒幕がー!注目の新シリーズ、開幕!書下し。
時は鎌倉時代末期。足利家の家宰・高師直は、幕府より後醍醐帝追討の命を受け上洛の途に就く。しかし師直は思う。「これは主人である尊氏に天下を取らせる好機だ」。帝方に寝返った足利軍の活躍により、鎌倉幕府は崩壊。建武の新政を開始した後醍醐帝は、次第に尊氏の存在に危機感を覚え、追討せよとの命を下した。だが師直はすでにその先に野望の火を灯しており……。婆娑羅者・高師直の苛烈な一生を伊東潤が描いた南北朝ピカレスク、待望の文庫化!
恋人を取られた女の元に現れたカレの同級生。彼女から、二人を別れさせる提案をされて…(「宵闇キャットファイト」)。勤務先の上司との別れ話がこじれてしまい「あなたの恋人、友だちのカレシ。強奪して差し上げます」という広告に飛びついた(「夜啼鳥と青い鳥」)。DV元夫から、子供を取り戻したい(「烏の鳴かぬ夜はあれど」)。女たちが抱える問題を“泥棒猫”ことヒナコが見事に解決!
信州松本近く、毎年シベリアから飛来する「白鳥の湖」で、首を折られた一羽の白鳥とともに写真家・金子敏の死体が発見された。一ヵ月後、金子の友人が、東京の自宅で血みどろの死体で見つかった。二つの事件には関連が?当初は病死と処理された金子の死に疑問を持った十津川は、事件の真相を探るため松本に飛んだ!(「白鳥殺人事件」)他、信州を舞台に描く傑作ミステリー集!