出版社 : 明日香出版社
デルポイに産す葦(常世の風戯壱)デルポイに産す葦(常世の風戯壱)
昭和六十三年、防衛庁長官が東京都麹町の自宅にて殺害された。時は冷戦末期、国家の枢要の欠缺に日本中が震撼する中で警察庁は特異な合同捜査を開始。ところがいざ捜査本部が設置されると、長官の愛娘である西四辻透子が出頭した。予期せぬ展開に警察が二の足を踏んでいる間に彼女は一族の専属弁護士に本庁内で殺されかける。 旧友の突然死、身内の隠蔽、透子の抱える忌まわしき秘密…運命と陰謀が織り成す群像劇の主役に据えられた公安捜査官が辿り着いた悲劇とはーー。 「常世の風戯」シリーズ第壱巻 序章 はじまりのつづき 第一章 象牙色の果実 第二章 大海原の白蛇 第三章 果たされるべき光明 終章 デルポイに産す葦
雪原に咲く雪原に咲く
イカシバの様子に頓着することなく、箱館奉行の小出は飄々として続けた。「わしは、アイヌのために生きているのでもなく、和人のために生きているのでもない。人は、人のために生きるものだ。ゆえに、おぬしが和人嫌いでも、わしはかまわん。おぬしが人のために生きてくれるのであれば、それでよい」
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