出版社 : 東奥日報社
盗まれる指先盗まれる指先
第8回東奥文学賞で大賞を受賞した「盗まれる指先」は遠隔医療の技術が格段に進化した2035年の青森県を舞台に、医学と倫理というテーマに鋭く切り込んだ作品です。 最終選考委員の文芸評論家・三浦雅士さんは「冒頭、手術する外科医の場面が秀逸。緊張感の生々しさが、近未来を描くSFだとの重要性にまで思いいたらせず、その筆力に驚嘆する」と賛辞。同じく委員を務めた芥川賞作家の川上未映子さんは「金と命の値段、医師の倫理、労働の厳しさと先行きの不安をしっかり描きつつ、現実と生のあやうさを問うてもいて、作品に深みを与えている」と評価しました。 東奥文学賞は東奥日報創刊120周年を記念して2008年に創設。青森県内在住者や青森県出身者を対象に小説を募集し、第8回は58編の応募がありました。
漆花に捧ぐ漆花に捧ぐ
第7回東奥文学賞の大賞に輝いた作品。日野洋三さんが執筆した「漆花に捧ぐ」は、江戸時代中期の弘前藩で津軽塗につながる技法を築いた塗師・池田源太郎の物語です。数々の困難に直面しながら、家族の献身的な愛に支えられ独創的な塗りの技法にたどり着くまでを描いています。 最終選考委員の文芸評論家・三浦雅士さんは「視点を世界から日本、登場人物へと迫っていく作品の骨格は司馬遼太郎が開拓した手法に通じる」とたたえました。同じく委員を務めた芥川賞作家・川上未映子さんは「塗りの成立自体が作品構造にダイレクトに響いてくる」とし「文体もテーマも単独的で刺激的」と評価しました。
PREV1NEXT