1999年9月18日発売
いつもの暮らしのそこここに、ひっそり開いた異世界への扉ー公園の砂場で拾った「雛型」との不思議なラブ・ストーリーを描く表題作ほか、奇妙で、ユーモラスで、どこか哀しい、四つの幻想譚。芥川賞作家の初めての短篇集。
ぶらりぶらりと歩きながら、語らいながら、静かにうつらうつらと時間が流れていく。鎌倉・稲村ガ崎を舞台に、父と息子、便利屋の兄と妹の日々…それぞれの時間と移りゆく季節を描く。平林たい子賞、谷崎潤一郎賞受賞の待望の文庫化。
殺人犯の汚名を着たまま獄中死した、婚約者の父の再審請求をしてくださいー。サラ金会社の社用で霧多市を訪れた、弁護士の宗像光生は、飲み屋のママ雅代からとんでもない依頼をうけた。サラ金の顧問という、弁護士として落ちぶれていた宗像は、雅代の度重なる懇願に負けて引き受けてしまうが…。二十年前の事件を追って、北海道から九州、四国を駆ける宗像の辿り着いた真実とは!?木谷ミステリーの最高傑作。
太平洋戦争末期、空襲で家を焼かれ、家族とともに路頭に迷いかけていた“僕”は、縁あってある裕福そうな邸に住み込ませてもらうこととなる。邸には上品そうな女主人と病気の娘の二人が住んでいるだけで、夜になるとどこからともなく悲しげにすすり泣く声が聞こえてくるのだった…。戦争という時代の狂気を背景に驚くべき事実が明かされる表題作の他、“女”シリーズ六篇を含む、幻想の物語全十一篇を収録。
妻が失踪した!新鋭建築家・隅田にとってそれはあまりに突然の出来事だった。まして知る由もなかった。彼の周囲で、不死を求める者たちが暗躍していることを。シュリーマンが発掘したクロノスの壺、古代の巨石信仰、犬神信仰、狼男伝説、吸血鬼伝説ー世界各地に残るこれらの伝承には、ある恐るべき事実を解く鍵が潜んでいるというのだが…。歴史の闇を縦横無尽に駆けるSF伝奇ロマンの傑作。
けだるくて退屈な夏休みのある日、高校生の僕は、友人の紹介で風変わりな少女・アキ子と出会い、そして彼女に惹かれていったー未来への不安、焦燥感、同級生の死、切ない恋心。誰もが通り過ぎて来た、青春のやるせない日々の一ページを鮮やかに描いた、青春小説の最高傑作。