2000年12月18日発売
作家である私は、灼熱のマニラで若いフィリピン人女性に一目惚れをしてしまった。気がつくと、アリスというその娘を、私は、年甲斐もなく夢中で口説き倒していた。月日が経つにつれ、アリスと私は、もはや離れられなくなっていった。やがて、年の半分をフィリピンで過ごす生活がはじまり、私は、アリスに薬局を買い与えた。だが、そこから少しずつ、何かが狂い始めていった。店の経営は行き詰まり、強盗に襲われ、アリスの嘘が次々と発覚していって…。著者の実体験に基づく傑作長篇。
札幌市郊外の学園都市が謎の爆発を起こし、瀬田寒原野に犬頭状の陥没が現れてから半年余り。今は立入り禁止となっているその周辺で、またも怪事件が発生していた。オカルトライター兼占い師の稲村虹子は、その事件の霊査を依頼され、札幌へ向かうが、彼女を待ち受けていたのは、黒魔術によって三たび目覚め、札幌に向かって首をのばす巨大な犬の顎であった。忌まわしき凶獣は甦るのか!?『魔犬召喚』から『屍食回廊』までの謎がここに明かされる!傑作オカルト・ホラー長篇。
時あたかも大東亜戦争を目前にしたある日、一高で発生した奇怪な人間消失事件ー本館正面にそびえる時計台の中から一人の学生が忽然と姿を消したのだ。事件前日に彼を訪ねた一人の女と、一高生に扮した偽学生の影が見え隠れする中、事件は悲劇的な展開を見せはじめる…。暗い時代を背景に、名探偵・神津恭介の若き日を描いた表題作とその続篇にあたる『輓歌』、二つの本格ミステリーを収録した一冊。
日曜日の東京発最終新大阪行きの『ひかり』は、週末を東京の恋人とともに過ごし、この便で帰るとぎりぎり、夜十二時の鐘が鳴る前に関西に戻れることから「シンデレラエクスプレス」と呼ばれていたー。この列車から切断された女性の左手首が発見された。発見者のコンパニオン・喜多村亜紀と櫛田範子は否応なく殺人事件に巻き込まれてしまう。そして亜紀のもとに届いた謎の手紙の意味とは何なのか。やがて事件は意外な結末をむかえることに…。
黒いビニール袋に入れられた女性のバラバラ死体が、都内の神社の境内から発見された。頭部と両手部分がないその死体は、被害者の身許すら分からず、事件の長期化を予想させた。そんな中、警視庁捜査一課の部長刑事・瓜生田洋は、遺体に残された手術前痕を手がかりに事件を追い始める。そして、医療事故を取材中だったフリージャーナリストの女性が、失踪しているとの情報が…。さらに病院関係者を追う瓜生田の眼前で第二の殺人が発生した!傑作警察小説。