2005年2月23日発売
水無川水無川
子ども虐待。犯罪被害者…。社会派の書き下ろし。 担任した児童が親の虐待で死亡し、教師を辞めた真壁。恋人の夏美は娘への暴力を止められず苦しんでいる。一方、夏美の隣人・野口はかつて…。親と子の深淵と再生を描く渾身作!(解説・小梛治宣)
さくらさくら
スーパースターのような存在だった兄は、ある事故に巻き込まれ、自殺した。誰もが振り向く超美形の妹は、兄の死後、内に籠もった。母も過食と飲酒に溺れた。僕も実家を離れ東京の大学に入った。あとは、見つけてきたときに尻尾に桜の花びらをつけていたことから「サクラ」となづけられた年老いた犬が一匹だけーー。そんな一家の灯火が消えてしまいそうな、ある年の暮れのこと。僕は、何かに衝き動かされるように、年末年始を一緒に過ごしたいとせがむ恋人を置き去りにして、実家に帰った。「年末、家に帰ります。おとうさん」。僕の手には、スーパーのチラシの裏の余白に微弱な筆圧で書かれた家出した父からの手紙が握られていたーー。
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