2010年9月12日発売
ストーリー&テリングストーリー&テリング
出会いは、最悪だった。コンビ漫画家、絵門千明は、相方の麻生藤太と立ち寄ったバーで、二人連れの女性客の一人、梶山真智子とちょっとした口論になった。ふたりには、バツイチで子持ちの共通項がある。翌朝。最悪の目覚めを迎えた千明。自宅マンションの呼び鈴が鳴る。そこには、昨夜のバトル相手、真智子の姿があった。「なんで…」お互いに言葉が出ない。真智子は、千明の自宅マンションの一つ隣りに越してきたのだった。30代男女を主人公に描く、「ラブコメ」シリーズ第二弾。
野の風野の風
仕事中心に生きている宇田川勇一は、父・総太郎が病に倒れたことを知る。妻、そして心を閉ざしてしまった息子とともに急ぎ故郷・広島へ帰省するが、脳死状態と医者に告げられた変わり果てた父の姿に絶句する。一方で、実家の部屋が纏う空気や呼吸のリズムは、勇一のなかに新鮮な風を起こし始める。ミシミシいわせながら昇る階段。黒光りする廊下の板。ガラガラと懐かしい音を立てる古い引き戸。両開きの窓から入り込む蝉の鳴き声。午後の風に微ぐ柿の葉。「鳥はええぞお。わしは今度は鳥に生まれてくるけえの」そういっていた父の言葉がふと胸にのぼる。
森崎書店の日々森崎書店の日々
貴子は交際して一年の英明から、突然、他の女性と結婚すると告げられ、失意のどん底に陥る。職場恋愛であったために、会社も辞めることに。恋人と仕事を一遍に失った貴子のところに、本の街・神保町で、古書店を経営する叔父のサトルから電話が入る。飄々とした叔父を苦手としていた貴子だったが、「店に住み込んで、仕事を手伝って欲しい」という申し出に、自然、足は神保町に向いていた。古書店街を舞台に、一人の女性の成長をユーモラスかつペーソス溢れる筆致で描く。「第三回ちよだ文学賞」大賞受賞作品。書き下ろし続編小説「桃子さんの帰還」も収録。
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