2016年11月7日発売
大名や幕臣から進物を買い取り、転売するのが仕事だけに、役人たちの裏の裏を知り尽くしているのが献残屋。その手代・佐吉は得意先である浦賀奉行所の役人が抜け荷に手を染めていることを知り、悪事を暴こうとするー。壁にぶつかる佐吉の前に現われる肝の太い男、そして情の深い女。一本筋が通った男である佐吉は、彼らの力を借りつつ、敢然と悪徳役人に立ち向かう。痛快さと人情味が味わえる長編時代小説。
東京の地下がテロリストに支配された!?-地下鉄の新線開業を間近に控えたある日、保線作業員の的場哲也は、勤務中にトンネルの中で怪しげな人影を見つける。またネット上でも、「地底人」が出現するという噂が飛び交っていた。そんな中、弟の洋次が過激な経済学者が主宰する勉強会に通っていると母から相談を受け、実情を探るのだが…。クライシス小説の旗手が描く、緊迫のノンストップサスペンス。
江戸の根津宮永町に、鯖縞模様の三毛猫が一番いばっている長屋があった。人呼んで「鯖猫長屋」。この美猫の名前はサバ。飼い主は、三十半ばの売れない画描きー。炊きたての白飯しか食べないわがままものの猫様が“仕切る”長屋に、わけありの美女や怪しげな浪人者が越してくる。次々に起こる不可解な事件に、途方に暮れる長屋の面々。謎を解くのは、いったい…。心がほっこりあたたまる、大江戸謎解き人情ばなし。
小言、失敗、荷物持ち。憧れ惚れた師匠だもの。ついていきます、どこまでもー。大学の講師を頼まれた師匠についていったキャンパスで、師匠が狙っていた女子大生から好意を寄せられて…(「講師混同」)。病を抱える師匠のお供で雪国へ。高座の翌朝、師匠がいない!?意外な場所で佇む師匠が見つめていたものとは?(「すず女の涙」)。師匠に振り回される若手噺家の悲哀を織り交ぜつつ、師弟の情を描いた短篇五席。