2016年7月14日発売
北の街にすむ学術論文執筆代行業者「代書屋」ミクラは、ひそかに想いを寄せる若い助教の研究室を訪ねる。しかし彼女は消えていた。すわ失踪、と思うもじつは、研究の詰めの調査のために南の巡礼の島・辺路島に向かったらしい。はかなげでほうっておけない、だから愛しい助教。彼女の研究はしあわせの正体を心理学的に解明すること。手がかりは助教の残した意味不明の走り書きのみ。ミクラは愛車・彗星号を質入れした旅費で辺路島へ向かった。島では優勝者がしあわせになれるという春祭り、別名・すごろく祭りがはじまる。果たしてミクラにできるのか、全島を舞台とした巨大すごろくに、人間駒となって参加して、助教を探しだすことがーしあわせになることが。
大学を卒業し、所長と同期社員ひとりだけの小さな私立探偵事務所に就職した松代。ある夜見た夢の中で、彼は城の前に立っていた。城内には、“夢の中の探偵事務所”所長を名乗るレミニセンスという若い女性がおり、「これが真相です」と赤い鳥を出現させ、「彼女が嘘をついているのです」と謎めいた言葉を口にする。翌日、事務所の依頼人の女性が、「今朝、職場の前にあるアパートで火事が起きた」と話す。一年間で四回、同じ部屋から出火しているというのだが、松代がアパート前で聞き込みをすると、火事のことは誰も知らないという。「嘘をついている」のは彼女なのか?
大阪ミナミの雑居ビルにある、「ビンテージ&アンティークショップ アシュリ」。アメリカのミッドセンチュリー家具を中心とした西洋古家具店だ。ふと訪れた女子大生の季子は、店頭にあった猫のブックエンドを誤って壊してしまったのをきっかけに、アルバイトをすることになった。時を経た家具に囲まれた店は落ちつくけれど、店長も来客もなんだか謎めいていてー使い込まれた家具が呼び込む、奇蹟によく似た物語。
1970年ー新宿。ナポレオンヘアのフーテン族、深夜営業のジャズ喫茶、東口のグリーンハウス…。強烈なカルチャーとの出会いが、大学生の僕の価値観を変えた!アラウンド’70の新宿を憶う昔懐かしい7つの青春小説。