2018年1月9日発売
1968年10月11日、東京プリンスホテルでガードマンが頭部を撃ち抜かれた。次いで京都、函館、名古屋と飛び火してゆく射殺事件。日本中を震撼させた連続射殺魔・永山則夫の、“人間”と事件の全貌を鮮烈に描いたノンフィクション・ノベル。21年間にわたり刑事被告人だった主人公が獄中で執筆した『無知の涙』『木橋』、獄中結婚、そして死刑確定と「犯罪を主題とする文学」を追究し続けた作家・佐木隆三の意欲作。
母の死や息子の受験など煩雑な現実に振りまわされながらも、“もっと単純に生きられたら”と心ひそかに願う中年の男。心臓を患った彼は、年寄りの医者にもっと海でも眺めていろと通告され、そんな偏屈さに妙なシンパシーを抱く。「単純」とははたして何かー。期間にして二年半の日々を、静かに、淡々と綴った阿部昭の自伝的作品であり、妻への思い、三人の息子それぞれに対する複雑な感情などがユーモアと深いペーソスで綴られている。
江戸では狐面の一味による付け火が横行していた。狐面の正体は美濃の郡上一揆のあぶれ者との噂が広がる。将軍家重に仕える公人朝夕人後見人の慎之助が、火の用心の見廻りに出たところ、美濃の庄屋の娘、澪と出会う。澪もまた狐面の一味を追っていた。一方、御側御用人の大岡忠光は、尾張藩主徳川宗勝が吉宗から託されたという遺言状の存在を知るー。書下し人気シリーズ第五弾!
母親・雪江のお伴で城崎温泉を訪れたルポライターの浅見光彦は、かつて金の先物取引の詐欺事件で悪名高い保全投資協会の幽霊ビルで死体が発見された現場に行きあたる。しかも、この一年で三人目の犠牲者だという。警察は、はじめの二人は自殺と断定。今回もその可能性が高いというのだ!?城崎、出石、豊岡…不審を抱いた浅見は調査に乗り出した。会心の長篇旅情ミステリー。
大坂に新幕府創設!?密かに準備されているという情報を得た銀次郎は、そのための莫大な資金の出所に疑問を抱いた。しかも、その会合の場所が、仇敵・床滑七四郎の屋敷であったことから、巨大な陰謀のなかに身をおいたことを知る…。老舗呉服商の隠居斬殺事件に端を発し、大奥内の権力争い、江戸城御金蔵の破壊等々、銀次郎の周辺で起きる謎の怪事件。そして遂に最大の悲劇が!?
肥後椿が咲き乱れる「百椿庵」と呼ばれる江戸時代からある屋敷には、若い女性の幽霊が出ると噂があった。その家で独り暮らすことになった新進小説家の青年井納惇は、ある日、突然出現した着物姿の美少女に魅せられる。「つばき」と名乗る娘は、なんと江戸時代から来たらしい…。熊本を舞台に百四十年という時間を超えて、惹かれあう二人の未来は?(タイムトラベル・ロマンス)
ナリタブライアンがよもやの敗戦を喫した。怪物ハイセイコー、皇帝シンボリルドルフ…。勝ち続けることの困難さを痛感する競馬記者の松崎達也。賭け事なら何でもござれで、競馬はもとより、麻雀ホンビキその他、高額レートでヒリヒリするような勝負に身を焦がす、人呼んで極道記者。ツキに見放されて真っ逆さまの奈落の底で、一世一代の大勝負に出るが…。伝説的賭博小説『極道記者』の続篇!巻末付録:わかりやすい手本引き。
枝蓮のメル友女子が河越高校に留学!?東御家にホームステイして、紫古流華道の師範免状取得を目指しながら、学校へ通うらしい。「温泉も、仲間とのバイクツーリングも、日本に行ったら自分もぜひ体験してみたい」と言ってるそうだ。そんなある日、俺は校長室に呼ばれた。バイク仲間みんな、県教育委員会フクズミ氏、国際留学生支援協会のホンジョーさんがいて、なにやら妙な緊張感が…。書下し温泉ツーリング学園小説。
シェパードばかりを狙った飼い犬の連続誘拐殺害事件が都内で発生していた。空手大会出場のため上京中だった山梨県警南アルプス署の神崎静奈の愛犬バロンまでもが、犯人グループに連れ去られてしまう。「相棒を絶対に取り戻す!」静奈は雨の降りしきる都会を突っ走る。激しいカーチェイス。暗躍する公安捜査員の影。そして事件の裏には驚愕の真実が!大藪春彦賞作家の書下しアクション。
凍える風が止むことのない冰心山。魔女が棲むと恐れられている山の頂には、伝説の名刀「月家刀」があるという。そこを目指す少年蓬己は、刀を手に入れて、両親の仇を討とうとしていた。しかし、あと少しのところで、謎の黒装束の男に奪われてしまう。窮地に陥った彼の前に永い眠りから目覚めた柳紫鳳が現れた。腐敗した王政と混迷する世情、彼女は再び騒乱の渦中に…。武侠小説。
警視庁組対四課の米沢英利に「女を捜して欲しい」とヤクザが頼み込んできた。米沢は受け取った札束をポケットに入れ、夜の街へと足を運ぶ。“悪い”捜査官のもとに飛び込んでくる数々の“黒い”依頼。解決のためには、組長を脅し、ソープ・キャバクラに足繁く通い、チンピラを失神させ、時に仲間である警察官への暴力も厭わない。悪と正義の狭間でたったひとりの捜査がはじまる!
尼崎藩江戸家老・塩谷隼人は、国許の農政改善への協力を求め、農学者の大蔵永常を訪ねる。永常は快諾の代わりに身辺警固を頼んできた。承知した隼人は相次いで不審な刺客と対決する。永常は幕府と薩摩の双方から狙われていたのだ。日の本の農業を向上させて民が飢え死にしない世を目指す彼が、怪しき人物であろうはずがない。隼人は薩摩藩前藩主・島津重豪の手の者と対峙することとなる。
京都府警の元刑事、実相浩二郎による「思い出探偵社」では、わずかな手がかりから依頼人の思い出の人や物を見つけ出す。今回の依頼は、二十八年間、内縁の妻として暮らしていながら、それまでの人生を一切語らないまま認知症状が出てきた女性の過去を探ること。ノートに書き留められた詩を手がかりに、岡山、倉敷、今治、名古屋、大阪と奔走する探偵たちは、徐々に悲しき真実に近づいていく。文庫書き下ろし。
棒手振りの魚屋に、鰹を千両で買いたいという奇妙な申し出があり…(「鰹千両」)、幕府直轄の御薬園で働く真葛は、薬種屋から消えた女中の行方を探ってほしいと頼まれるが…(「人待ちの冬」)、商家の妾が主夫婦の息子を柏餅で毒殺した疑いをかけられるが、料理人の季蔵は独自の捜査を進め…(「五月菓子」)など、“捕物”を題材とした時代小説ミステリー。話題の女性作家陣の作品が一冊で楽しめるアンソロジー。
初添乗に臨む新人バスガイドの美織。しかしアナウンスは拙く、失敗してばかり。そんな彼女を見かねて、助け船を出したのは、一人の女性客で…(「東京のバスガール」)、国際結婚した若い妻の不機嫌に右往左往する夫(「嫁に来ないか」)、共同経営者と訣別した女性の携帯に届いた音楽に込められたメッセージとは?(「なごり雪」)など、一台のバスに乗り合わせた人々の人生模様を、昭和の名曲とともに綴る傑作短篇集。
幼馴染の史郎を一方的に恋慕い、結婚を夢見る咲希は、ひょんなことから結婚式の代理出席者である「サクラ」のバイトをすることに。サクラを頼むだけあって、出席する結婚式はどこか不穏なものばかり。そんな中、花嫁の幽霊が出るという“いわくつき”の老舗ブライダル会館で問題が頻発することに気づいた咲希は、史郎とともに謎に巻き込まれていく。恋とオカルトが錯綜する、エンターテインメント小説。