2018年3月27日発売
ナラ・レポートナラ・レポート
<b>母さん、あの大仏をこわしてよ!</b> 母を失くした居場所なき少年は、この世の権威を憎んでいた。その象徴をこわしたとき、男たちが作り上げた正史の余白から、いかなる物語が流れ出るのか。時空を超え、生死の境に降り立つ未踏の日本文学。 未収録短編「ヒグマの静かな海」併録 大仏を例えば「基地」なり「日本人」なり「原発」なりに置き換えれば、同じ構造が現代のそこかしこに存在している。 そして、存在しなかったことにされている生が、心情が、語られることのない物語として、聞こえない声で語り続けられている。 ーー星野智幸「声のかけらの氾濫」より ナラ・レポート ヒグマの静かな海 声のかけらの氾濫 星野智幸
この春、とうに死んでるあなたを探してこの春、とうに死んでるあなたを探して
矢口弼は38歳、元税理士。離婚を経験して仕事にも疲れた矢口は、中学時代を過ごした雨森町にひとりきりで戻る。新しい住まいは、かつての同級生・小日向の営む喫茶店「レインフォレスト」の上階。外見は変わっても中身は子どものままに騒々しい小日向に矢口は面食らいながらも、少しずつ雨森町になじんでいく。そんなふたりにもたらされる恩師の死をめぐる謎。先生の死は事故なのか?あるいは、生徒からのいじめを苦にした自殺?23年前の真実を求めて、矢口と小日向は元クラスメイトを訪ねるがー。失くしたものも、ふたりでなら見つけられる。喪失を抱えた者たちの人生を全力で肯定する物語。
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