2022年5月23日発売
北海道の『空知総合病院』で働く研修医四人は、研修開始から三か月がたち、本格的な夏を迎えようとしていた。少しずつ医療現場に慣れつつある彼らであったが、新たな科に配属になるや否や、超緊急帝王切開が必要な妊婦が救急搬送されてくる。母子に命の危機が迫る中、産婦人科医や小児科医たちが必死で母子を救おうとするのに対し、研修医の清水涼子はなすすべもなく立ち尽くすばかり。彼女はなにもできない無力さを痛感し、病院という場所で働く重責を再認識する。小児科に配属された風見司もまた、初日から厳しい出産に立ち会って自分の未熟さに打ちひしがれていた。末っ子の彼は子供にどう対応していいのかわからず、四苦八苦していたが、次第に診察を通して子供に向き合っていく。朝倉雄介は高齢者医療に携わる中、祖母と暮らしていた頃を思い出し、貧しかった昔と、医師として歩み始めた今の自分を見つめ直していた。そんな折、高齢の女性患者の脱走に出くわしてしまう。彼女が向かった場所はー。沢井詩織は人付き合いが苦手ながらも、近頃は患者との対話にも慣れつつあった。しかし一人で患者を回診していたある日、思わぬトラブルに巻き込まれてしまう。そして夏の終わりに北海道でも新型コロナウイルス感染症が流行し、ついに空知総合病院でも感染者が確認された。四人もコロナ禍で働く現実を実感せずにはいられなかった。
スリルに憑かれ空き巣を繰り返す羽矢子。だが侵入した家の猫に引っかかれ、逃げた先で奇妙な老人に出会いー。(「猫どろぼう猫」)自尊心が高く現実に向き合えない王司。金目的で父の死を隠蔽した後、家にやってきたのはー。(「窮鼠の旅」)“お手伝いさん”として田舎の館に住み込むことになった、たえ。そこでの生活は優雅だが、どこか淫靡でー。(「風のない夕暮れ、狐たちと」)その他「十字路の蛇」「胡乱の山犬」「日陰の鳥」「音楽の子供たち」全七篇。“化物”たちの饗宴を、ご覧あれ。
時は元禄。紀州の農民の子・文吉は、巨大な廻船に憧れたことをきっかけに商人を志す。許嫁の死をきっかけに、彼は「ひとつの悔いも残さず生きる」ため、身を立てんと江戸で材木商を目指すー。蜜柑の商いで故郷を救い、莫大な富を得ながらも、一代で店を閉じた謎多き人物、紀伊國屋文左衛門。天才商人の生き様に迫る痛快作!
人民解放軍による台湾侵攻が止まらない。中国は、東京を狙った弾道弾攻撃で日本を牽制しつつ、台湾への攻勢を強めていた。台湾北部の紅樹林エリアでは、のちに「地獄の夜」と呼ばれる激戦が繰り広げられたが、台湾軍が辛くも勝利。ところが時を同じくして、中国からは5万もの兵が「第2梯団」として送り込まれていた。主戦場は、台湾中部の濁水渓へ。渡河の瞬間を叩くべく厚い防御陣を敷く台湾軍に対し、中国人民解放軍は、極秘裏に開発していた新兵器を大量に投入する。“サイレント・コア”部隊も参戦する、慟哭必至の第四巻!
湾岸の高層オフィスビルの屋上にバラバラ死体が入ったスーツケースが置かれていた。その場所へは警備システムが完備した屋内非常階段を上がるか、ヘリコプターで空からアクセスするしか方法がない。だがいずれもその形跡がなく、死体がどうやって運ばれたか特定できないまま捜査は難航する。令和X年、クルマが東京の空を飛ぶ!!空飛ぶクルマ『エアモービル』研究開発の光と影をえぐる本格ミステリー。
捜査一課に配属されて間もない刑事・静川涼吾の全神経は、完黙を続ける容疑者を前に、極度に張り詰めていた。本当にこの男が殺したのだろうか…。誰の記憶にも残らないような、おとなしそうなこの男が。-事の発端は同僚殺害容疑だった。やがて、すでに事故として処理されてきた複数の事案がつながり始めた。真実が明らかになるほどに、いよいよ深まっていく謎。容疑者が落ちない理由を知った静川は…。