2023年1月12日発売
『貝がらと海の音』『せきれい』(いずれもP+D BOOKSに収録)、『ピアノの音』という、子どもが独立し、実家を出ていってしまったあとの、夫婦ふたりの日常を描いた連作の続巻。「同じようなことばかり書き続けて飽きないかといわれるかも知れないが、飽きない。夫婦の晩年を書きたいという気持ちは、湧き出る泉のようだ」と著者自身が「あとがき」で触れているように、庭に咲く花やご近所さんとの交流、家族旅行、孫の近況など、平凡な日常のなかのちょっとした変化を、さりげない、やさしい文章で記録していく。読む人が幸せな気分になれ、繰り返しページをめくりたくなる秀作。
1957年に発表された単行本デビュー作品。大学在学中に結婚し、夫の赴任地・北京で生活。子どもにも恵まれたが、帰国後に夫と子を残して家を出たというドラマチックな前半生が、9篇の短編に凝縮されている。佐藤春夫、井伏鱒二、三島由紀夫に絶賛され第3回新潮社同人雑誌賞を受賞した「女子大生・曲愛玲」、お産と子どもに関する記憶をたどる「訶利帝母」(鬼子母神)、教育勅語や結婚という呪縛から抜け出し「基礎工事が不完全であろうとも、乏しい資材を駆使して、わたしはわたしの力を振り絞り、じぶんの文学をうちたてたいと思うのだ。」と、この世界で生きていく意気込みを語る表題作「白い手袋の記憶」など、みずみずしい感性で描かれた作品集。
十三歳の祇園の舞妓、千恵とお民は、舞妓の店だしの日、巽橋の上で「どっちが祇園一の舞妓になるのか勝負せなあかんのや」と対峙する。そこから二人は京都を代表する粟田焼の窯元・錦光山宗兵衛を巡って争い、思いもよらぬ運命の糸にもてあそばれるように変遷を繰り広げていく…。幕末から昭和にいたる京都の粟田に生きた陶家の人々の怒濤の日々、栄光と挫折、祇園に生きた女たちの愛と確執を描く壮大な歴史ロマン!!