2024年1月11日発売
亡くなった年に発表された遺作短篇集。「もしも日本に帰れずに、かの地で死ぬようなことがあったら、私は必ず前歯にジェズスの教えのみしるしを刻みこんで置きます。」本家の敷地内から発見された壺の中から、365年前にマカオに流された先祖の“遺言”が発見された。遺骨の行方を捜しにマカオを訪れた千葉裕平は、亡くなった娘・由紀子に生き写しの女性、葉銘蓮と出会う。果たして、“みしるし”を刻んだ遺骨は見つかるのか、そして葉銘蓮の正体はー。マカオへの幻のような旅を綴った表題作に、八甲田山雪中行軍の外伝「生き残りの勇士」、イギリス公使オールコックが外国人として初めて富士山頂に立った顛末を描く「富士、異邦人登頂」など8篇を収録した短篇集。亡くなった年に出版された遺作のひとつ。
小説と随筆をシームレスにつなぐ小沼の世界 「グリイン・コオチと云ふ緑色の長距離バスがあつて、それを利用して娘と小旅行した。このバスは倫敦を出ると田園風景のなかを走る。巨きな樹立の続く竝木路とか、緩かな起伏を持つ牧場、森蔭に覗く町の教会の尖塔……そんなものを見てゐるだけで愉しかつた。」 早稲田大学の在外研究員として半年間ロンドンに滞在した経験から書かれた表題作のほか、江戸時代にロシアに漂着したある日本人が、現地で日本語教師として活動し、ついには世界初の露日辞典まで編纂したという史実に基づいた「ペテルブルグの漂民」、師と仰ぐ井伏鱒二ら文学仲間との東北旅行を描いた「片栗の花」など、小説と随筆を取り混ぜて11篇収録。 旧仮名遣いながら、ユーモアを交えた流れるような文章で、読者を小沼ワールドに誘い込む。
佐藤俊雄は少年時代から様々な災難に見舞われたが、その都度、救いの手を差し伸べてくれる人がいた。信頼すべき友人に恵まれ、最愛の女性との愛も結実し夫婦として人生を共にした。俊雄は周囲の人々との絆をより深く築き上げるべく努力し、家族の一員としての責任と役割、愛情や思いやりの重要性を最大限に実践してきた。人生の過程では喜びや悲しみ、挫折や成功、出会いや別れなど、数々の出来事に巡り合う。それらを通じて、人々はどのような人間でありたいのか、何を大切にして生きるべきなのかを見出すことに努力する。「最後」とは物事の終わりではなく、「最後」のあとには、新たな始まりが待っている。人生の「最後」がいつ訪れるかは分からない。だからこそ、その前にできる限り充実した人生を送りながら、今を生きるべきなのだ。佐藤家を取り巻く人々との生き様を丁寧に紡いだ愛と命の物語。 はじめに/出会い/喜び/運命/生い立ち/友情/無常/最後/あとがき
謎に彩られた日々の中で、 あなたは私の一番になった 『ななつのこ』から始まる〈駒子〉シリーズ、 20年ぶりの最新作! 大学生の玲奈は、全てを忘れて打ち込めるようなことも、抜きんでて得意なことも、友達さえも持っていないことを寂しく思っていた。そんな折、仔犬を飼い始めたことで憂鬱な日常が一変する。ゼロと名付けた仔犬を溺愛するあまり、ゼロを主人公にした短編を小説投稿サイトにアップしたところ、読者から感想コメントが届く。玲奈はその読者とDMでやり取りするようになるが、同じ頃、玲奈の周りに不審人物が現れるようになり……。短大生の駒子が童話集『ななつのこ』と出会い、その作家との手紙のやり取りから始まった、謎に彩られた日々。作家と読者の繋がりから生まれた物語は、愛らしくも頼もしい犬が加わることで新たなステージを迎える。 ■目次 「初めに読んでいただきたい前書き」 「プロローグ」 「ゼロ」 「1(ONE)前編」 「1(ONE)中編」 「1(ONE)後編」 「エピローグ」 「読み終えてから読んでいただきたい後書き(もしくは蛇足)」