著者 : AkiZero
苑国へ五名の妃嬪が嫁がれる日、對国の末姫・夏雲の姿もあった。輿入れでは民衆から花が手向けられるはずが、勇ましい夏雲には野草が似合うと、三叶草が投げられた。美麗で冷酷に見えるが故に「悪女だから」と噂もされた。けれど本当は可愛いもの好きで、特技は刺繍。衣装はもちろん平たい胸を補う肉饅頭もお手製だ。服を脱がなければ大丈夫…と夏雲は堂々と振舞うが、かえって注目を浴び、皇帝・佩芳から寵愛を受けることになってしまいー!?困難にも縫い針一本で挑む。大胆乙女の後宮恋愛ファンタジー!
幼い日。婚約の儀に縮こまっていた実瑚の記憶に残るのは、緊張をほぐす甘いお菓子と、差し出された親王様のふくよかな御手。月日は流れ、実瑚はお菓子作りが好きな、やんちゃな姫となっていた。苦手な占いの勉強をした、ある日の帰り道。実瑚は通りすがりのお屋敷に橘の実を見つける。そこへ現れたのは見目麗しい青年“橘の君”。どこか懐かしい彼に橘の実を使った甘味を振る舞うと、宮中に住むという彼の父にも食べさせてほしいと請われて…?運命の再会に誘われ、実瑚の占いとお菓子作りが宮廷の闇を暴く!
藤十郎とともに京へ戻ったせつな。しかし、第八警邏隊には療養を終えた隊士・本条がいて、あやかしだと見破られてしまう。屯所を追われたせつなは、親戚の都子のもとに身を寄せることとなる。せつなと藤十郎は密かに逢瀬を重ねるが、都子は離縁すべきだと言い出す。別の男性に嫁がせようと画策する都子に追い詰められる中、せつなは彼女の抱える秘密に気づく。-それは京をも揺るがす悲しい事件の始まりだった。そして、せつなと藤十郎にも最大の危機が訪れる。二人が選ぶ未来はー。
ようやく藤十郎率いる第八警邏隊の面々と馴れ親しみ始めた年の瀬。せつなは婚家・奥沢へ帰省することになった。藤十郎を連れ戻ったせつなは義祖母から手厚くもてなされ、義妹・奈緒の気遣いも温かく、自分の居場所ができたように感じていた。しかしそんな思いとは裏腹に、次期当主の妻となるせつなへの恨みを募らせていた奈緒は、「何か」と引き換えにどんな願いも叶えるという神社を偶然にも訪れるー。一方で奈緒の様子がおかしいと藤十郎から諭されたせつなは、咄嗟に反発してしまうが…?
父親に疎まれ座敷牢で育った少女・せつな。父の死後、あやかし警邏隊隊員・藤十郎のもとへ嫁ぐが、務めに一途な藤十郎は実家へ戻ろうとせず、せつなは夫の顔を見ることすら叶わない。婚家では虐められ、せつなは逃げるように彼がいる京へと向かった。ようやく出会えた藤十郎は、部下を従えた剛腕な隊長。思わず臆したせつなは身分を隠し、彼らの下働きに就く。仲間と過ごすうち、気付けば心の距離も近づく二人だが、あるとき離縁の選択を迫られる。そこには決して二人が結ばれることのない「秘密」があった。