1995年3月5日発売
「俺の力の続くかぎり、ぜったいお前を離さない…」あの無口でシャイなゆーさんの口から、そんな甘い言葉が出てくるなんて。でも、ゆーさんの腕のなかで、それを聞いているのは私じゃい。すごくきれいな顔をしているけど、間違いなく男の子だったの-。-大ショックのミキだけど、トラブルはまだまだ続いて。
「卒業まであと1000時間、藤崎なんか、それっきりになっちゃうぜ」だから告白すればって、北原クンは、あっさり言ってくれたけど。わかっては、いるんだよ。千堂クンと話すことができるのも、同じ学校にいるうちで。高校はべつだから、街で会っても気づいてもらえないかもしれない…。でも、もし告白して断られたら。あたし、どうすればいいの。
沢木涼は、あたしのケンカ友達。あいつは、バスケ部の元エース。言いたくないけど、カッコイイ。ほんとにモテる。でも彼女がコロコロ替わる、超いいかげんなヤツ。おかけで、あたしは、恋人にするなら、ぜったいマジメで誠実な人がいい、と思ってる。で、あいつとは正反対の村上くんと付き合うことになったけれど…。演劇部で、ずっと脇役だった、あたし-。卒業までに、恋の主人公になれるのかな。
大好きなひとに、もう会えなくなるなんて、悲しすぎる。そんなのイヤだよね。だから、卒業までにこの想い伝えたい。そうすれば臆病な自分から、そして片想いからも、卒業できるかもしれない…。そんな恋をしているあなたに、ちょっぴり勇気をわけてあげたくて、“卒業”をテーマに三つの恋のおはなしをお届けします。『永遠の第2ボタン』『緊急連絡網』『先生を好きでいた1年』-それぞれの恋は。
「へーちゃん、大好きだ」嬉しそうに叫んで、背中に飛び乗ってきたトモ君。そのまま彼をオンブして、僕はグラウンドを走り始めた。柔らかい日差し、ポプラ並木の枯れ葉色。頬にあたる風、背中のトモ君の温もり。すごく嬉しかった。すごく楽しかった。-僕らの宝物のような日々。でも、これは永遠には続かないんだ。“卒業”の日は、誰にでも必ずくるんだよ-。